第2章:RA-TECH NPASキット WE オープンチャンバーシステム用(RAG-WE--026)について
第2章:RA-TECH NPASキット
WE オープンチャンバーシステム用(RAG-WE--026)
NPASキットと言えばRA-TECHが有名です。彼らはNPASというものを発明したと言っても過言ではありません。
ただ、特許というものではなく、実用新案でしたが日本、台湾、香港でも登録されております。
実用新案は10年で期限が切れてしまいますので、現在はNPASキットの製造に縛りはなく、VFC製品などに搭載されているのは皆さんご存じの通りです。
RA-TECHはNPASキットの次のステップとして、マグネットタイプのNPASを実用化しております。
さて、まずNPASとはなんぞやというところからにしようと思っているのですが、
NPASとは、Negative pressure adjustable systemの略です。日本語では負圧調整機構といった感じでしょうか。
負圧?どういうこと?という感じだと思いますが、ガスブローバックのシステムというのは、本当に大きく分けると2種類しかありません。
WA社のマグナシステムか、負圧システムです。
マルイもKSCもWEもVFCもGHKも負圧システムです。
ご覧の通り、ほぼ全てのGBBがこの負圧方式なのですが、
これは、M4ボルトキャリアを想像してみると分かりやすいです。
ボルトキャリアの中にローディングノズルがあって、ノズルの中に負圧バルブ(フローバルブともいう)は設置されています。ノズルの前にはチャンバーがあり、ノズルの下にはマガジンがあります。
基本的な配置です。
作動したときのガスの流れを見てみましょう。
マガジンからガスが出ると、上部のガスルートパッキンからガスが出て、ノズルに入ります。
ノズルにガスが入ると、ノズル内にガスが充満します。
ガスに満たされたノズル内には、穴が空いています。そう、チャンバー側に穴が空いているのです。
充満したガスは、一気にチャンバー側の穴へと殺到します。
そうなると弾が発射されます。
弾が発射されるとどうでしょうか。わずかな隙間はあったものの、ほぼ塞がっていた弾がチャンバーからなくなることで、広大な空間が空くことになります。
そうなるとガスは銃口側に一気に流れていきます。そうなるとノズル内はガスが抜けていきますので負圧となります。
やっと、負圧になりましたね!
弾がない状態で撃っても振る舞いは基本的には同じです。たまに差を感じる機種もございます。
負圧になると銃口側へガスが吸い出されるため、バルブスプリングが圧力に負けて負圧バルブ(フローバルブともいう)が閉じます。
閉じたらどうなるでしょうか?ノズル内にはガスが出る隙間がなくなるのです。負圧から正圧に変わります。
次に圧力に負けるのは、ノズルリターンスプリングとリコイルスプリングです。
リターンスプリングとリコイルスプリングが圧力に負けると、遂にボルトキャリアが動き始めます。
ボルトキャリアが動き始めるということは、ここでやっとブローバックが始まるのです。
ブローバックが始まったとき、まだマガジンからはガスが出ています。
ボルトキャリアが最後まで後退したとき、通常は、ハンマーがコッキングされています。コッキングされているということは、バルブノッカーも下がっており、マガジンのガスは出ていない状態になっているということです。
ノズルリターンスプリングは、ボルトの後退時には、逆にノズルをチャンバーから呼び寄せており、前進時にノズルに付いている給弾アゴがマガジンの弾を拾ってチャンバーに弾を送り込んでいます。
リコイルスプリングの力でボルトキャリアが前進し、閉鎖されたらブローバック作動の完了となります。
前回もそうでしたが、だんだん複雑になってきました・・・。
結局NPASってなんなんだという話になるのですが(やっと本題に)、
ノズル内が負圧から正圧になるタイミング(ブローバック開始タイミング)を調整することが出来ます。
機構としては単純な話で、NPASキットはノズル本体とノズル後方にあるネジで構成された製品です。
ネジを回して、バルブ本体の位置を、閉まりやすい位置にするのか、閉まりにくい位置にするのかで調整を行います。
バルブを銃口側にセッティングすると(閉まりやすい)、閉まるまでの時間が短くなりますので、弾を発射するために使えるガスは少なくなり、初速が落ちるということです。
弾を飛ばすために使うガスが少なくなるということは、早くブローバックが始まり、理論上はガスの消費量も減るはずですが、現実として変化を感じ取れるくらい変化はないことの方が多いです。
前回お話ししましたが、インナーバレルが短かったら、長かったら、径がラージボアとタイトボアで弾の加速具合が変わったり、バルブスプリングで閉まるタイミングが変わったりということを組み合わせると、たくさんのセッティングが出来ることがお分かり頂けると思います。
ガスというリソースをどこに使いたいのか、それをセッティングすることが出来れば、GBBのカスタムはとても楽しいものになると思います。
当店は日々、こういうことを考えながら、カスタムをしたり製品について思いをはせたりして仕事をしています。
ストライクアームズはバネばっかり作ってるな!と思っている方も多いと思いますが、
全くその通りです!でも、その理由もお分かり頂けたと思います。
ベストセラーの商品を紹介するという企画のはずが、当店の仕事の一部をご案内する事になってしまいましたが、
プロって良い意味で変態なんだなと思って頂けたら大変うれしいです。
【今回ご紹介した商品】
RA-TECH NPASキット WE オープンチャンバーシステム用(RAG-WE--026)